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「日本の地震噴火が9世紀に集中しているのはなぜだろうか?」に対する疑問

以前、自分のヤフーのブログへ書いた記事です。


📷クリップ追加📷日記📷練習用2016/11/3(木) 午後 0:12📷📷「日本の地震噴火が9世紀に集中しているのはなぜだろうか?」( http://www.hayakawayukio.jp/paper/9thcentury/index.html )に対する疑問

 日本地震学会のないふるメーリングリストへ投稿したものです。アーカイブの[nfml:7699]として、http://www.mmjp.or.jp/zisin-nfml/members/spool/msg07688.htmlに載っています。特に文字化けもしていません。


 早川由紀夫氏による「日本の地震噴火が9世紀に集中しているのはなぜだろうか?」について、もともとの論文を自分は見ていません。上のページの右上に「歴史地震研究会1999年9月24日(伊賀上野)で発表」との記述があり、リンク( http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/musha/rekishiZ16.html )が張られていますが、リンク先には既に文書がありません。そのため、早川由紀夫氏のサイトで公開されている記事( http://www.hayakawayukio.jp/paper/9thcentury/index.html )に対して、疑問を述べさせていただきます。

実際の主張はネット公開されているものとは違うと言うことがあるかも知れません。その場合は、ぜひ、そう教えて頂きたいと思います。

最初に、そもそも、早川氏は結論として「9世紀の地震集中は,六国史編集による人為効果である可能性がつよい」と、「可能性」を指摘されているだけです。しかし、例えばウィキペディアの「地震の年表(日本)」( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%81%AE%E5%B9%B4%E8%A1%A8_(%E6%97%A5%E6%9C%AC) )には、 >地震年表では、前後の時代と比較し9世紀に地震が増加している。これは、実際に地震が多く発生したのではなく、中央集権体制が整い為政者側が積極的に情報を収集した為と考えられている[31][32]。 と記載があり、[31][32]には、 >[31] 日本の地震噴火が9世紀に集中しているのはなぜだろうか?>[32] [日本の地震噴火が9世紀に集中しているのはなぜだろうか?]歴史地震・第15号(1999) と記されていて、[31]には http://www.hayakawayukio.jp/paper/9thcentury/index.html へのリンクが張られています。これが問題であると思います。早川氏は「可能性」を述べているだけであり、9世紀地震集中は人為的なものであると断定されているわけではありません。明らかに、早川氏の論文が世論の誤誘導に使われていると思います。

 以上のことを前提に、9世紀地震集中は人為的なものであるという主張のどこに疑問があるかを述べさせていただきます。

 基本的に、地震と噴火を比較された結果、噴火に見合う地震がないという論理であると思います。特に、 >9世紀の7噴火のうち5噴火が富士山を含む伊豆弧の噴火である.伊豆弧の噴火を除外すると,9世紀集中は完全に消滅する.9世紀のピークは,伊豆弧における噴火連続発生がつくっていたのである.一方,9世紀の被害地震15回のうち,伊豆は1回(841年),関東は2回(818年と878年)だけである.東海はない.9世紀の地震の震央は,全国に散らばっている.伊豆弧の活発化が9世紀の地震数を増加させているわけではない.9世紀の地震集中は,どうやら六国史編集による人為効果でみえているみかけ現象である可能性がつよい. と言う文章から、「9世紀の7噴火のうち5噴火」を構成する「富士山を含む伊豆弧の噴火」に見合う噴火として、「伊豆は1回(841年),関東は2回(818年と878年)だけ」であり、「9世紀の地震の震央は,全国に散らばっている.伊豆弧の活発化が9世紀の地震数を増加させているわけではない」ので、「9世紀の地震集中は,どうやら六国史編集による人為効果」という論理構成がされていることが分かります。

ここで、地震と噴火を比較する共通の尺度は何かという問題が発生します。「伊豆弧の活発化が9世紀の地震数を増加させているわけではない」から、「噴火数が増加すれば、同じ地域での地震数が増加する」という仮定があると判断できます。この仮定が地震と噴火を比較するための共通の尺度として使われています。いわば、地域別頻度と言うべきものでしょう。

共通の尺度さえあれば、どんなものであっても比較はできます。卵と雲であっても、例えば、その色を尺度とすれば、比較はできます。ある卵の白さとある雲の白さを比べて、どちらがより白いかと言うことは可能でしょう。

重さはどうでしょうか。卵は、普通、簡単に重さが測れますから、重さを知ることができます。しかし、雲は、その重さを直接測ることができませんし、一定の体積を採取してその重さを測ることが出来ても、ある一つの雲全体の体積を測ることはとても難しいでしょう。そもそも、どこに雲の輪郭があるのかを決めることが困難であるはずです。つまり、卵と雲では、重さと言う共通の尺度は使えないのです。

地震と噴火の関係から、「9世紀の地震集中は,六国史編集による人為効果である」と言うためには、共通の尺度があるだけでは足りません。相関関係が無ければいけないからです。一方がある方向に変化すれば、他方も一定の方向に変化するという関係です。例えば、卵が白くなると雲も白くなるとか、または、白い卵がたくさん採卵出来たから白い雲がたくさんできるということはありません。卵と雲との間には、少なくとも色と言う尺度については相関関係はありません。

では、「9世紀の地震集中は,六国史編集による人為効果である」に関して、どんな共通尺度があり、どんな相関関係があるのでしょうか。

地域別頻度が共通尺度です。しかし、頻度を尺度として使うには、ある問題があります。何を持って一回と数えるかです。

噴火については、 >過去1000年間の噴火事例は,噴火規模4.5もしくは5.0以上の噴火はもれなく収集されているが,規模4.0以上の噴火は約半分しかまだ収集されていない

とか、

>噴火規模5.0以上に注目してみよう.17世紀以降の増加傾向はとくに認められない.9世紀集中も認められない(注1).噴火規模4.5以上に注目すると,9世紀集中はみられないが,17世紀以降の増加傾向がややみられるようになる.噴火規模4.0以上に注目すると,9世紀集中も17世紀以降の増加傾向も顕著にあらわれる.

とあり、規模について考慮が払われていることが分かります。

しかし、地震については規模のことが触れられていません。「地震の年表(日本)」から9世紀の地震について、年と名称(地域)、規模だけを抜き出すと次のようになります。 818年 弘仁地震 - M 7.9。827年京都 - M 6.5?7。830年出羽 - M 7?7.5。841年前半 伊豆地震 - M 7。850年出羽国地震 - M 7。863年越中・越後地震 -記録は疑わしいとする見解もある。867年陸奥国大地震868年播磨国地震- M 7台869年貞観地震 - M 8.3?8.6(Mw >8.7)。878年相模・武蔵地震 - M 7.4。880年出雲 - M 7。887年京都 - M 6.5。    信濃北部地震 存在しない地震であるとの見方が強い。    仁和地震(南海トラフ連動型地震説あり) - M 8?8.5。

京都の地震は二つともM 6.5との記載があり、他の地震と比べて規模が小さかったことが分かります。このことから、規模が小さくとも都で起これば記録されることが分かります。もう一つ、規模で分かることは、9世紀にはM8以上の地震が二回発生していることです。M6規模に比べてM8規模はほぼ1000倍の大きさであるとされるのですから、地震について、その規模に考慮を払う必要があります。その理由は、まっず第一に、大きな地震であればそれだけ損害が大きくなり、記録として残りやすいのは明らかであるからです。第二に、大きな地震は誘発地震を伴い、M8規模が起これば、その震源域の周囲でM7規模の地震が10倍程度の頻度で発生するからです。

つまり、早川氏の議論は、噴火については規模に考慮を払い、地震については規模を無視しているのです。この点で、比較が非対称になっています。

次に、

>9世紀の7噴火のうち5噴火が富士山を含む伊豆弧の噴火である.

ところが、

>過去1000年間の噴火事例は,噴火規模4.5もしくは5.0以上の噴火はもれなく収集されているが,規模4.0以上の噴火は約半分しかまだ収集されていないことがこの図からわかる.

と記されているのです。この記述からは、規模4.0から4.4の噴火については、その数はより多くなる可能性があることが分かります。つまり、9世紀の噴火集中自体がかなり根拠がないのです。このことは、9世紀に噴火集中がなかったという意味ではなく、9世紀に比べての10世紀とか11世紀の噴火減少が事実ではなく、まだ把握されて居ない可能性があるという意味です。ともかく、9世紀の噴火について、規模4.0から4.4の噴火が7個中4個も含まれていることは、噴火の数の評価についても正確性を欠いていると言えると思います。

以上、共通の尺度という観点について、上のような問題があることが分かります。

次に、相関関係について述べます。早川論文には、相関関係を明示的に述べた部分がありません。

>9世紀の7噴火のうち5噴火が富士山を含む伊豆弧の噴火である.伊豆弧の噴火を除外すると,9世紀集中は完全に消滅する.9世紀のピークは,伊豆弧における噴火連続発生がつくっていたのである.一方,9世紀の被害地震15回のうち,伊豆は1回(841年),関東は2回(818年と878年)だけである.東海はない.9世紀の地震の震央は,全国に散らばっている.伊豆弧の活発化が9世紀の地震数を増加させているわけではない.9世紀の地震集中は,どうやら六国史編集による人為効果でみえているみかけ現象である可能性がつよい.

とか、「まとめ」として

>17世紀以降の地震と噴火の増加は,人為効果によるみかけ現象である.>9世紀の噴火集中は,人為効果による側面もあるかもしれないが,その時代の伊豆弧が活発化した事実を確実に反映している.>9世紀の地震集中は,六国史編集による人為効果である可能性がつよい.

と書かれているだけです。

つまり、一般的な常識として、「ある地域で噴火があれば、それに見合う数の地震が同じ地域である」という相関関係を仮定しているのです。

しかし、仮にこういった相関関係があったとすると、早川論文には、却って矛盾が発生します。

1.中央集権体制が整って、記録が集まりやすかった9世紀に、伊豆弧で5噴火があったのであれば、なぜ、それに対応する関東から伊豆の地震が3回だけなのか。つまり、噴火記録が確実性のあるものであり、地震数の把握が不確実であるという前提から導かれるのは、関東から伊豆の地震数が3回よりも多くなるはずだという結論ではないか。

2.「9世紀の地震の震央は,全国に散らばっている.」ことが事実であるとすると、その全国に散らばった地震震央の近くにある火山で噴火活動が観察されていないといけません。しかし、噴火について、「9世紀のピークは,伊豆弧における噴火連続発生がつくっていた」とされていて、全国的な噴火活動の増加は無かったとされているように思えます。

3.噴火にしても、地震にしても、大規模なものは記録に残りやすいわけです。少なくとも、記録に残っているものであれば、実際にそれがあったとすることになると思います。そこで、噴火規模別の100年ごとの噴火数のグラフを見てみます。すると、9,10,11世紀はその前後の世紀、つまり、7,8世紀や12から16世紀と比較して噴火規模4.5以上の噴火が少なくとも2倍以上発生していたことが分かります。このことから、少なくとも9世紀から11世紀に地震活動が活発化した可能性を言うこと事が出来るはずです。 上の3点の内、特に3.が重要です。相関関係について、噴火規模を考慮して推理すると、却って9世紀の地震集中が想定出来てしまうのです。

よって、相関関係についても疑問点があることが分かります。

以上、9世紀の地震集中が人為的なものであるという説についての反論を述べさせていただきました。

なお、三陸沖で大津波があったことは1986年には指摘されていたようです。例えば、「埋もれた警告1 箕浦幸治教授」( http://tsujiandon41.blog.fc2.com/blog-entry-80.html )に、次のような記述があります。

(*以下引用開始:)1986年、西暦869年に襲来した貞観津波の砂層を初めて発見したのは箕浦教授である。それは箕浦教授の画期的な調査手法によってもたらされた。箕浦教授の研究歴1983年:日本海中部地震;マグニチュード7.7、地震による死者4人      日本海中部地震津波;高さ最大14.9m、 秋田中心に死者100人 このとき海が白く濁ったことから、湖には過去の津波の痕跡があるのではないか。十三湖周辺でボーリング調査を行い湖底堆積物を調べたところ、海底の成分を含む砂の層が見つかる。(*以上引用終わり)

また、「仙台平野の歴史津波―巨大津波が仙台平野を襲う!」という本が1995年に出版されています。この本には、宮城県議会へ警告の陳情を行ったことが書かれています。

早川論文は1999年ですから、東北地方太平洋沖地震の発生前です。2011年のM9地震発生が、早川論文による世論の誤誘導につながったのではないでしょうか。

2016年10月29日 武田信弘 2016年11月03日12時05分 武田信弘 ジオログ(http//geocities.yahoo.co.jp/gl/taked4700)はヤフーブログ(http//blogs.yahoo.co.jp/taked4700)へ移行しました。CN:101335  SN:3941

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