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  • 執筆者の写真taked65

温泉と地熱発電は共存共栄が可能!

 地熱開発で地熱資源量の減少が起こっているとの指摘がよくされるが、多くの場合、自然環境の大規模な変動が原因であり、誤解であることが多い。例えば、えびの高原では、大霧(地熱)発電所が1996年に運転開始を開始し、以前は多く上がっていた湯けむりが姿を消したと2005年ごろから指摘がされた。しかし、現在も大霧発電所は運転を継続しているが、2015年ごろから、えびの高原には湯けむりが多く上がるようになってきている。


 つまり、温泉・地熱資源は火山活動により生み出されるものであり、火山活動は大規模な海洋プレートの沈み込みによって発生するものなので、2011年3月11日の東北地方太平洋沖大地震で太平洋プレートが大きく沈み込み、その影響で、西日本付近でのフィリピン海プレートの沈み込みも活発化したため、えびの高原での湯けむりが復活したと考えられる。2005年ごろに湯けむりが止まったことも、M9地震発生直前になり、太平洋プレートの沈み込み停止の程度が究極的に大きくなったからと説明できる。


 マグマは、海のプレートが深さ100キロから150キロ程度にまで沈み込んだ地点で生成される。海のプレートの深さがこの程度になる地点を結ぶ線が火山フロントと呼ばれる。よって、海のプレートの沈み込みが止まると、マグマの生成が止まる。それが1960年以降に徐々に地熱資源量が低下していった一因。

 

 大きな地震が起こることは、大きな固着域が破壊されることであり、そのためには、大きな固着域が出来る必要があり、それは、大規模な海洋プレートの沈み込み停止と同じ。フィリピン海プレートは、太平洋プレートの沈み込みによって駆動されていて、太平洋プレートの沈み込みが停止すれば、フィリピン海プレートの沈み込みも停止する。つまり、フィリピン海プレートの動きの変化は、太平洋プレートの動きの変化に遅れる。これが、太平洋プレートの沈み込みで火山活動が起こる東日本で噴火が1960年以降ほとんどなかったのに、フィリピン海プレートによって火山活動が起こる西日本の桜島などの噴火が小規模でも続いてきた理由。なお、プレートの動きの変動は、プレート自体が巨大なものであるため急に起こるものではなく、数年から数十年、或いは数百年の過程に渡って起こるもの。


 なお、えびの高原での湯けむり復活とか2011年の大地震直前の新燃岳・桜島の噴火などは、プレートの動きそのもとというよりも、プレート境界で、海洋プレート沈み込み圧力が陸のプレートへ伝達され、結果として陸のプレート内部の圧力上昇し、地表近くの湯だまりとかマグマ溜まりに係る圧力が上昇した結果である。マグマそのものの上昇があったからというわけではない。


 地熱資源とは、具体的には熱とそれを蓄える水のこと。熱は火山活動に由来し、水は多くの場合、雨水だが、沿岸部の温泉の場合は海水になる。内陸の温泉の場合、海のプレートが沈み込むときに、一緒に沈み込んだ海水が地下深くから上昇してくる場合もあるが、その場合も、雨水が大量に混入する。よって、温泉帯水層からの温泉水の利用や、地熱貯留層からの蒸気や熱水の利用についても、その地域一帯の降水量がどの程度あるかが、利用量の限度を決めることになる。多くは、降水量の数パーセントが限度量となることが経験的に分かっている。なお、沿岸部にある温泉は、海水が大部分であるため、降水量で限度量を決めることはできない。


 また、温泉の大部分が温泉帯水層という地下300m程度までの地層にある温水を利用しているのに対し、地熱発電は、地下2000m程度の地熱貯留層の熱水や蒸気を利用している。温泉帯水層と地熱貯留層の間には不透水層が自然形成され、それが温泉帯水層と地熱貯留層を分離するため、一方の資源の増減が、他の資源の増減を引き起こすことは原理的にない。


 温泉滞水層は、温水を蓄えている地層であり、そのため、隙間が多い地層。噴火の際に出てきた軽石や小さい石などが火山灰に混じった地層。火山噴火が起こると、かなり広い地域へ比較的均等に降り積もるため、もともとの地形が平坦であれば、広い範囲に浅い温泉帯水層が出来る。山筋などの斜面であれば、谷が出来、そこに温泉帯水層が発達する。平地でも緩やかなでこぼこがあることが多く、その場合は低地に温泉帯水層が出来ることになる。多くは川筋。その場合でも、地上の川のような水の流れが、地下にそのままあるわけではなく、スポンジのような多孔質の地盤に徐々に温水がより低い方向へ流れているだけで、見た目で流れを確認は出来ない。温泉帯水層は深さが300メートル程度よりも浅い所に形成されることが多い。


 地熱貯留層は、マグマの熱を得て、水が高温になり、それが高圧を生み出している。マグマは地下100キロ程度のところから徐々に上昇してきて、地下5キロ程度のところにマグマだまりを形成する。マグマだまりの側には、上昇する過程でより温度が低下して、玄武岩・安山岩になり、その岩体が地上へ出てきたり、地下の数キロの深さにあることが多い。これ等の岩体が地層の中を上昇するときに、周囲の地層に亀裂を発生させる。この亀裂は地下のマグマだまり近くから地表近くにまで連続して発達するため、この亀裂を雨水が循環し、地下深くの熱を地表近くへ運んでいる。また、これらの岩体自身がもともとはマグマであったため、数万年前の火山活動であっても、現在も数百度以上の熱を持っていることがある。地熱貯留層は、このような亀裂や高温岩体の上部に形成される。深さは多くが1500メートルよりも深くなる。


 不透水層の形成は、地熱貯留層の形成に従って起こる。そのため、地熱貯留層の形成が新しいと、不透水層の形成が不十分なことがある。地下深くから亀裂を上昇してきた熱水は多くの鉱物成分を溶かし込んでいるが、地下1000m程度まで上昇すると天水(雨水)などに接触するために温度低下し、結果的に鉱物成分が析出する。これが不透水層となり、地熱貯留層にふたをするような形で、高温・高圧の地熱環境を形成する。ふたをするような形で出来るため、帽岩(ぼうがん)と呼ばれることもある。不透水層は細かい粒子の粘土であり、そのために水を通さない。


 不透水層の形成には長期間が必要なので、不透水層の形成が不完全で、熱や水が地熱貯留層と温泉帯水層の間を行き来していることもある。不透水層の形成がまだ不完全である場合、その地域を変質帯と呼ぶ。指宿市の場合、権現変質帯,指宿粘土変質帯,南迫田変質帯,鰻池変質帯,鷲尾岳変質帯,松ヶ窪変質帯,尾下変質帯,利永変質帯,辻ノ岳・大山変質帯,成川変質帯,上仙田変質帯,伏目変質帯などがある。これ等の変質帯の中で、地下の熱量が特に多い地域が、権現変質帯,指宿粘土変質帯,南迫田変質帯,鰻池変質帯,伏目変質帯とされている。規模の大きい亀裂が地下深くから地表近くまで発達していて、そのため、熱量が大きい。数千キロワットから数万キロワットでの地熱発電が出来る。ヘルシーランド周辺は、深さ300メートル程度の井戸でも高温高圧であり、不透水層の形成が完全ではない可能性が高い。ただし、その主な原因は沿岸部で、海水が地熱貯留層へ多く侵入しているからだと思われる。


 温泉帯水層の温泉井戸が自噴することがあるが、これは、温泉帯水層が地形的に周囲よりも低い場所形成されたところに井戸が掘られていて、そのために、温水が地表よりも上に自噴してきている。地熱貯留層に掘られた地熱井戸の場合、地下の高温の熱水が高圧を生み出し、その結果、蒸気や熱水が自噴する。温泉井戸にしても、地熱井戸にしても地盤の重さが水に圧力をかけて自噴しているわけではない。これは、例えば、高層ビルの1階に人がいても、上からビルの重さを受けているわけではないのと同じ。地層の重さは地層を形成する岩石などが主に受けていて、水が受けているのは一部。ただし、揺さぶられると岩石などの結合が外れ、水に圧力がかかる。地盤粒子の結合が外れたところに高い水圧がかかるため、圧力が高くなった水が地表へ吹き出す。これが液状化現象。地下の水が無くなるため、地盤沈下する。


 なお、熱は地下深くからのものだが、水は基本的に天水(雨水)や海水である。温泉帯水層の水は、地表から浸み込んだ雨水が直接的に温泉になる。温泉の定義は一定の割合で鉱物質が溶け込んでいることだが、これらの成分は、地下深くからの熱水が温泉帯水層の水へ混入することで含まれる。不透水層の広がりは限定されているため、その外側から雨水が地熱貯留層へ入り込み、地熱貯留層の亀裂から地下深くへ浸み込んだものが、熱を得て上昇している。この熱水が不透水層の縁から温泉帯水層へ還流したり、不透水層の形成が不十分なところから温泉帯水層へ混入する。


 なお、このことにより、地熱貯留層の水量への補給は、不透水層の周辺からの雨水に限定されていることが分かる。そのため、地熱貯留層を利用する地熱発電の場合、原則的に、出てきた熱水を全て地下へ戻している。このことには、地下深くから上がってきた過程で溶け込んだ重金属などを地表に放出せず、地下に戻す必要があることも理由の一つ。このための井戸を還元井と呼ぶ。つまり、地熱井戸からの熱水交じりの蒸気を、気水分離器で分離し、熱水は還元井で地下へ戻し、蒸気はタービンへ行き、発電後は冷却塔で水に戻されて、そのまま下水管などへ排出される。もともとは蒸気であるため、重金属を含まず、一般の排水と同じ。地熱貯留層の水の一部は、海のプレートの沈み込みにしたがって、海水が共に沈み込み、それが地下100キロ程度まで沈み込んでから上昇してきたものが含まれることがある。地熱貯留層の水は鉱物などを高濃度で含むが、温泉帯水層は低濃度であるため、温泉帯水層からの温水は地下還元する必要はない。


 温泉帯水層の熱は、火山の火口付近から来ている場合もある。地上数百メートルとか千メートル以上にある火口の周辺の、地下数千メートルから火口付近にまで発達した亀裂へ雨水が浸透し、それが熱を得て、地下深くから地表まで上昇するという形で熱を得ている。この場合は、火山の頂上付近に熱源があるので、山の斜面に沿って温泉帯水層が形成され、山のふもとにも温泉帯水層が出来る。指宿市のウナギ温泉などがその典型であり、池田湖の東部にある山地の東側の平地にもこのような温泉帯水層が形成されている。二反田川周辺の温泉も同じ。つまり、池田湖東方の山地から指宿港へ向けて比較的浅い地層に温泉帯水層が形成されていて、その熱源・水源は山地の頂き付近で、そこから海岸へ向かって温泉水が流れ下っていることになる。


 この地区の温泉帯水層は、その直下にある地熱貯留層から水や熱を得ていないため、その地熱貯留層を利用した地熱発電をしても、温泉帯水層を利用する温泉井戸へ影響を与えることはない。つまり、熱源も水源も、温泉帯水層は地熱貯留層とは分離している。


 その他に、温泉帯水層と地熱貯留層を隔てる不透水層の形成が不十分な箇所や、不透水層の広がりの周囲などから熱を受けて、温泉帯水層を形成することがある。この場合、かなり直接的に、温泉帯水層の熱源が地熱貯留層になっているため、地熱貯留層の利用が温泉帯水層の熱量低下を起こす可能性がある。


 どちらも、地熱貯留層の利用には適正規模があり、現状では、容積法という地熱貯留層の体積を見積もって、利用可能な地熱発電出力を推定することが行われている。つまり、不透水層の形成が不十分な場合などでも、適正な規模であれば、温泉帯水層へ影響を与えずに、地熱発電は可能となる。


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