先日、日本気象協会の震央分布図を2010年よりも前のものから見直していて、気がついたことがあります。それは2011年の1月の東日本の震央分布図が今年11月のものに比較的近いということです。
何が近いかと言うと、千葉県の海域の地震が房総半島南東沖辺りの一件のみであり、千葉県東方沖の地震がないこと。そして茨城県沖もどちらかと言うと福島県沖に近い海域で起こっていること。次に伊豆半島の東方沖で地震が起こっていること。そして関東地方の陸域の地震が多いこと。
似ていないのは、東北地方での地震が陸域、海域とも少ないことです。
この11月、関東地方では 陸域の地震が多く、千葉県東方沖は今のところ発生がありません。茨城県沖も一件しか発生がなく、海域が極端に少ないのです。また伊豆半島東方沖、具体的には伊豆大島近海で地震が起こっています。東北地方では陸域地震が少なく、海域地震が多く起こっています。
また、全日本全国で見ると11月11日までの30日間の実績で111件、陸域50件,海域61件の地震が起こっていて、どちらかと言うと地震数は微増です。2011年の1月は大幅な 地震数減少が起こっていて、1月は74件、陸域37件、海域37件でした。311前は30日間で通帳100件程度の地震が起こっていましたから、2011年1月は3割程度の減少です。この意味ではこの11月は311前の状況とは異なっています。なお2011年2月は反対に日本全国の地震数が増加をしていました。
しかしながら、仮に次の大地震の震源域を小笠原海溝付近だと仮定すると、この違いは特に大地震が近いことを否定する材料とはならない可能性があります。
つまり、311大地震の時は三陸沖の大きな固着域が破壊されて、それがM9地震につながったのでした。非常に大きな固着域であったため、その固着域を破壊するためには大きな力が必要となり、その大きな力が固着域にかかることによって、その周辺での太平洋プレートからの圧力が減少して、2011年1月に関東や東北または全国で 地震数が減少することが起こっていたと考えられます。
それに対し、仮に伊豆小笠原海溝付近での大地震ですと、状況が次の点で異なります。
つまり、伊豆小笠原海溝付近では、太平洋プレートの沈み込み角度が、311大地震の時の東北沖の日本海溝と比べて、格段に急激になっているのです。そのせいで、伊豆小笠原海溝付近では蛇紋岩というかなり柔らかい岩石が分布しています。 この岩石が他のものと比べて格段に柔らかいため、地震を起こすほどの圧力の蓄積がされる前にプレート間が滑ってしまい、そのため周辺での太平洋プレートの圧力の 減少が起こらないのです。このことを読むと、しかしながら、では伊豆小笠原海溝付近では滑りやすいのだから、そもそも大きな地震が起こらないのではないか、と思われるかもしれません。ところが、伊豆小笠原付近でも大きな地震は起こるのです。実際に2015年5月30日には M 8の大地震が起こっています。これは震源深さが約400キロという非常に深い深発地震でした。つまり311大地震は、海溝の海のプレートの沈み込み深さが10キロから30キロ程度の深さのところで、大地震が起こったのですが、伊豆小笠原海溝では震源深さが数百キロの大地震が起こる可能性があるのです。
震源深さが深いため、広い地域で振動を感じることになり、震源深さが仮に100 km 程度ですと、津波も起こってしまう可能性があるのです。
多分仕組みとしては、沈み込んだ海のプレートの先端部分が、海溝部分から沈み込む途中の、まだ震源深さが100 km 程度の海のプレートに引っ張る力を与え、結果的に震源深さが100 km 程度のところで、正断層型の地震が起こるというものです。より深いところでは沈み込む方向へ、より浅いところでは海溝の方向へ海のプレートが動くため、海のプレートの上にある陸のプレートが持ち上げられたり、海溝部分の海のプレート自体が隆起したりして、津波が発生をします。
このことが可能になるには、海のプレートが100キロとか150キロ程度までの深さに沈み込むと、海のプレートの中に含まれていた海水が、高圧のために分離され、それがマグマの発生を促すことがあります。普通であれば、マグマの発生によりプレート自体が軟弱になり、地震は起こらないのですが、海のプレートの先端部分の沈み込み速度がある程度以上の時には、軟弱になる程度よりも引っ張りの力の方が強くなり、結果的に亀裂が発生するように地震が起こるのです。
伊豆小笠原海溝での大きな地震が起こりやすくなっていることを示す別の根拠根拠があります。
それは伊豆小笠原海溝やそれに続くマリアナ海溝での地震数の推移です。気象庁の震度データベースで震央地名として、鳥島近海、鳥島東方沖、父島近海、小笠原諸島西方沖、硫黄島近海、小笠原諸島東方沖、マリアナ諸島の7地域を指定をして、1922年1月1日から2019年11月10日まででの震度別地震回数表を作成すると次のような結果が出てきます。
1920年代:022
1930年代:035
1940年代:032
1950年代:031
1960年代:030
1970年代:036
1980年代:095
1990年代:091
2000年代:124
2010年代:219
合計:715
地震の回数を見る時には、震度計の精度とか震度計の設置密度を考慮する必要があり、1970年代までの地震回数が30程度であることに対し、1980年代以降は90以上に激増していることは、地震捕捉率が上がったためと考えるべきだと思います。
しかしながら2000年代に124に増加してるのは、捕捉率が上がったためというよりも、実際に地震数が増加したためだと思われます。つまり2000年代には311大地震の前兆現象として、伊豆小笠原海溝などでの地震数が増加していたということだと思います。
次に、2000年1月1日から2009年12月31日までの震度別地震回数を作ると次のようになります。
2000年:012
2001年:014
2002年:011
2003年:008
2004年:005
2005年:011
2006年:012
2007年:020
2008年:013
2009年:018
合計:124
2010年1月1日から2019年11月10日までの震度別地震回数を作ると次のようになります。
2010年:025
2011年:017
2012年:016
2013年:015
2014年:023
2015年:033
2016年:026
2017年:020
2018年:021
2019年:023
合計:219
311大地震の前である2010年に、ある程度地震数が増加してることがわかります。2015年に33となっているのは、5月にM8地震が小笠原諸島西方沖で起こったためです。そしてこの M 8が起こる前年である2014年から現在まで地震数が20以上で継続しています。この増加の継続が、伊豆小笠原海溝付近での m 8程度の大地震の前兆である可能性があるのです。そして、これは当然海域の地震であるため、陸での揺れはどちらかというと小さいのですが、311の震源は関東平野よりも北側にあり、 伊豆小笠原海溝は関東平野よりも南側であるため、関東平野の南北の両端で巨大地震が発生したことになり、関東平野の地下で、太平洋プレートは大きく沈み込みの遅れが発生していることになってしまうのです。結果的に いわき沖の固着域とか、犬吠埼先端の固着域、さらに鹿島第一海山付近の固着域などが大きく破壊される大地震が起こりやすくなります。
更に、その前後に関東平野の陸のプレートに、大きく太平洋プレートの沈み込み圧力がかかり、それによって比較的浅い直下型の m 6から m 7程度の地震が頻発する可能性が高いのです。
更に、伊豆小笠原海溝での大地震が 発生しなくても、311大地震で宮城県の牡鹿半島沖が50 m 程度すべったことにより、この緯度で太平洋プレートが大きく沈み込みを強めていることは明らかですから、このことだけをとっても、関東平野付近で太平洋プレートプレートの沈み込みの遅れが発生していることになり、関東付近で沿岸や内陸部で m 6程度の地震が起こりやすくなっていると思われます。
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